研修医の声
庄内弁:「いーあんね」はなしていーなだ?
庄内弁ネタはかつても擦りに擦ってはいたものだが、だいたい話題になるのは
「まぐまぐでゅー」
と相場が決まっている。
だが実際使う世代は80overに多く、具合が悪い人が多いのもあって、なかなかはっきりと聞かれることも最近では少ない。
病棟や、救急外来で聞かれる庄内弁で難解なのは単語というよりも、やり取りをする中で多様な意味を持たせてしまっている熟語だったりもする。
「いーあんね」はなしていーなだ?
タイトルを読んで何を伝えたいか一発で伝わるのはおそらくはネイティブ庄内現地人か、しばらく住んでかじっている通であろう。
区切り方で意味が異なるように聞こえるが、実際庄内弁のイントネーションで読めばこれ以外にはない。
だがそれをわかるように説明したいかといえば、わかるじゃんと説明したくもならない。これもまた庄内人あるあるだ。
実家に帰って話していると常々思うところだが、主語と述語が明確にされない。
話していて、周辺の情景を事細かに伝える割に、肝心な中身が弱かったりもする。
雰囲気で楽しそうにするのが得意な人種...いやこれは佐藤家に限る話かもしれない。
なんとなく伝わる感じで話して、なんとなく空気を読んで伝わる。これは鶴岡に居るとよくあることだし、他職種とも「あっ!」と気づきながら話しているなと実感する瞬間も多くあるものだ。
回診中に、ボスが患者さんにとある治療を勧めた時の話。
以前からやった方が患者さんのためだし...と外来でも推していた治療のようだった。
「いーあんね」
こてこての庄内弁使いが放つこの言葉に感情が高ぶり、私は思わず病室を飛び出してしまった。
思わずK主幹さんに声をかける、「聞きました!?」と。
「んだの。これは文脈でやった方がいーあんねと、やんねぐでいい、あどいーの意味の二つのどっちがってこどじゃんの。」
侵襲を伴う治療であり、やや目を伏せながらも力強い言葉で言った「いーあんね」
言葉に込められた意味は、見れば明らかだった。
庄内弁のやり取りの端々に、機微や奥行き、美しさを感じる瞬間がある。
ここにアイデンティティを持ち、得意げになってしまう、よくある朝の一コマだった。
元研修医 佐藤
2026年08月26日

